■バレリーナを目指すトランスジェンダーの少年を描いた話題作『Girl/ガール』。7月5日(金)の公開に先駆けてルーカス・ドン監督が初来日。都内でジャパン・プレミア・イベントが開催された。
ルーカス・ドン監督は本作が長編映画デビュー。カンヌ映画祭で新人監督に贈られるカメラドールを受賞したのをはじめ、アカデミー賞外国映画賞のベルギー代表選出、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞ノミネートなど華々しいデビューを飾り、第2のグザヴィエ・ドランなどと称され注目を集める若手監督だ。
そのドン監督との一問一答。 (2019年4月25日 記)
●ドン監督挨拶:映画学校を卒業してつくった今回の『Girl/ガール』が長編デビュー作になります。日本に持ってくることができ、またみなさんにお見せできることを嬉しく思います。
<実際の記事からインスピレーションを受けたという本作制作の経緯について>
●ドン監督:わたしが18歳だった2009年頃、当時15歳だったノラさんの記事を読んだことがはじまりでした。本人はトランスジェンダーで、バレリーナを夢見ていました。この作品とは違いますが、男性から女性のクラスに変更を願い出たところ、学校に断られたことが記事になっていたのです。世間が自分のアイデンティティを変えようとするなか、あるがままの自分であろうとした姿にインスピレーションを受けました。 彼女は自分を取り巻く規範や考えを壊そうとしており、自分を裏切ることなく闘っていました。当時の自分は周りのイメージに合わせてしまった経験があったので、彼女のことを知ったとき大きな敬意を感じました。
<トランスジェンダー役のキャスティングについて、なぜジェンダーを問わず募集をかけたのか。1年半を経たというキャスティング秘話>
●ドン監督:この作品をつくるにあたって、いちばん複雑だったのが主役ララのキャスティングでした。振付が名匠シェルカウイによるもので、それを踊れるダン サーでなくてはなりませんでした。また15 歳でありながら主演として作品自体をになう必要があり、ララというキャラクターをエレガントに、リスペクトをもって表現できる人物でなければなりません。そのためになるべくオープンに、ジェンダーにこだわらずにキャスティングをしました。 ただ、作品のモデルであるノラさんのイメージが強すぎて、すべての資質を持っているひとはなかなか見つかりませんでした。それとは別に、ダンサーのオーディションも行っていたところにビクトール(ポルスター)がやってきて、ノラを見たときに感じたものを彼からも感じたのです。
<天才とうたわれる振付師シディ・ラルビ・シェルカウイが振り付けを担当し、彼本人もこのプロジェクトに期待を寄せたそうですが、実際はクロースアップでの撮影が多く採用されていました>
●ドン監督:初期の段階で実際の振り付けはあまり撮ることが出来ないことを伝えました。もったいない気持ちもありましたが、肉体や表情を近いところから撮ることで踊りが肉体にどんな影響を及ぼすのかを撮りたかったのです。
< ライティングについて>
●ドン監督:シーンによっては光によって何かを伝えようとすることもあります。この作品の脚本を書いているときにインスピレーションのひとつとなったのが、イカロスの神話です。照明のことを考えたときに、実際に日光を取り入れたいと思うようになりました。また肉体が誇張されるシーンでは青のネオンぽい照明を、肉体的な触れ合いがあるシーンでは赤の照明を使いました。
『Girl/ガール』 2019年7月5日(金)から新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ有楽町/渋谷・Bunkamuraル・シネマほか
監督/脚本:ルーカス・ドン 出演:ビクトール・ポルスター/アリエ・ワルトアルテ
2018年ベルギー(105 分) 配給:クロックワークス/STAR CHANNEL MOVIES 原題:Girl ©Menuet 2018
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